明晰夢中の運動練習は覚醒時の運動技能を向上させるか
Daniel Erlacher、Michael Schredl
Sport Psychologist / related Erlacher studies
まとめ
スポーツや技能の練習を明晰夢で行うことに科学的根拠がある。
ただし、まず明晰夢自体を安定して起こす技術が前提。
身体練習に完全に代わるものではなく、補助的なメンタルリハーサルとして位置づけるのが妥当。
概要
ダニエル・エルラッハーとミヒャエル・シュレドルが、40名を明晰夢練習群・身体練習群・対照群に分け、明晰夢中のコイン投げ練習が覚醒後の運動成績を向上させることを示したパイロット研究である。
7名が明晰夢で課題を遂行し、成功率3.7→5.3/20回へ有意に改善した。
背景
覚醒時のメンタルリハーサル(imagery practice)は運動技能向上に有効であることが知られていた。
明晰夢は鮮明な運動イメージと意志的制御が可能な状態であり、「夢の中での練習」が覚醒後のパフォーマンスに転移するかが問われていた。
本研究はその可能性を初めて実験的に検証した。
方法
40名を明晰夢練習群(n=20)・身体練習群(n=10)・対照群(n=10)に割付。
課題は10セントコインをカップに20回投げ、命中数を数える。
明晰夢練習群は1夜で明晰夢中にコイン投げを試みるよう指示。
夕方と翌朝に自宅で性能テスト。
明晰夢練習群20名中7名が明晰夢で課題を遂行(成功者サブグループ)。
結果
成功者サブグループ(n=7)で有意な性能向上(3.7→5.3命中/20回, p < 0.05)。
明晰夢に入れなかった13名は改善なし(3.4→2.9)。
身体練習群が最も大きな向上を示し、次いで明晰夢成功者群が対照群・非成功者群より有意に高い改善を示した。
睡眠の質への悪影響は報告されなかった。
主要な発見
- 明晰夢中のコイン投げ練習で覚醒後の成績が3.7→5.3/20回に向上
- 明晰夢成功者7名のみが改善、非成功者13名は改善なし
- 身体練習群が最大の改善、明晰夢成功者群がそれに次ぐ
- 睡眠の質への悪影響なし
- 夢中運動練習の覚醒時転移効果を初めて実証
意義
アスリート・音楽家の夢での練習(mental practice)研究の先駆け。
Stumbrys 2015(指タッピング課題)など後続研究の基礎となった。
注意点
自宅実施のため明晰夢の客観的検証なし。
1夜のみの練習で短期効果のみ。
特定効果(運動学習)か非特定効果(動機づけ)かの区別不可。
サンプルサイズが小さい(成功者n=7)。